大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)1041号 判決 1966年4月26日

上告人

籏山幸子

上告人

籏山肇

上告人

籏山宏

右三名訴訟代理人

入谷規一

守田利弘

被上告人

長坂新次

右訴訟代理人

南舘金松

南舘欣也

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人入谷規一、同守田利弘の上告理由について。

原審の確定するところによれば、上告人籏山幸子は、昭和三四年一一月二六日訴外坂和鬼子弥の無権代理人として同訴外人所有の本件不動産を被上告人に売り渡したところ、その後の三五年一月五日同訴外人から右不動産の譲渡をうけ、その所有権を取得するにいたつたというのである。

右の事実によれば、前記売買契約は、上告人幸子の無権代理行為に基づくもので無効であるが、無権代理人たる同上告人は、民法一一七条の定めるところにより、相手方たる被上告人の選択に従い履行又は損害賠償の責に任ずべく、相手方が履行を選択し無権代理人が前記不動産の所有権を取得するにいたつた場合においては、前記売買契約が無権代理人(同上告人)自身と、相手方(被上告人)との間に成立したと同様の効果を生ずると解するのが相当である。したがつて、上告人幸子が被上告人の代金支払債務不履行を理由に本件売買契約を解除した旨主張していること記録上明らかな本件においては、右契約の効果が被上告人主張の追認により本人たる鬼子弥に帰属し上告人幸子は民法一一七条による履行の責に任じない等の事実が明らかにされないかぎり、原審としては前記上告人主張事実の存否について審理判断すべきであるにかかわらず、原審が、前記追認の存否について審理することなく原判示の理由のもとに上告人幸子は本件売買契約における売主でないとして、上告人の前記主張を排斥したのは違法であり、原判決はこの点において破棄を免れない。そして、前記事実の存否については、なお審理する必要があるから、この点についてさらに審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すのを相当と認める。

よつて、民訴法四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(柏原語六 五鬼上堅磐 横田正俊 田中二郎 下村三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例